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【レクチャーレポート】204~231

2025年度-ポスター斎藤信吾・根本友樹・田代夢々_イブニングセミナー.jpg

R204:北島拓弥

 「いのち輝く未来社会のデザイン」。158カ国の国・地域が参加した大阪・関西万博にて、トイレや休憩所といった共用施設は、ダイレクトに来場者に使用されることでその有用性や安全性を厳しく精査された立場にあったものであったと思うし、設計者としてもそれに耐えうる強度が求められる非常に難解な仕事であったと察せられる。現にSNSなどでの世間の反応としては、建設費からサインの視認性まで、幅広い視点と価値観から批判が飛び交うといったことが起きていたし、時には各国のパビリオンや大屋根リングをも超える注目度がトイレに向けられていたといっても過言ではないだろうというような状況が発生していた。そのような公共的に使用される「トイレの問題」は大阪・関西万博の開幕以前にも幾度か問題として取り上げられており、設計者に対してはこれらの問題に対する解が求められていた背景があった。
 そのような中で、斎藤慎吾氏、根本友樹氏、田代夢々氏が設計した大阪・関西万博の〈トイレ8〉では、現状の問題を乗り越え次世代トイレを考案するべく、「かたち」の原理である「かた」から見直し、「多焦点的な視点を保持する」という設計手法のもと、万博公衆トイレのあたらしい在り方に応えていたように思う。斎藤氏らは高さの異なる半円形の小さなボリュームの密度を調整しながら寄せ集めるように構成することで、男性と女性と共用の三つのエリアに緩やかに区分けすると同時に、多方向に視線が抜ける透明性がある風景を作り出していた。
 斎藤氏らを含めた複数の建築家によってあらゆる角度から見直しと新たな在り方が考えられた万博公衆トイレであったが、依然として残る問題や新たに生まれた課題があったことだろう。人種や性に関してその捉え方が変化しつつある現代社会に応答すべく、公衆トイレデザインにおける設計者の苦悩と新しい方向性を感じられた講演会であった。

R205:山内結稀

 今回のイブニングセミナーでは、斎藤信吾氏、根本友樹氏、田代夢々氏による「トイレ8」の設計について講演を聞いた。講演では、従来の男女で明確に分けられたトイレ空間ではなく、ジェンダーレス化や多様な利用者に配慮した新しいトイレのあり方が提案されていた。特に印象的だったのは、共用ゾーンを中心に各トイレを配置することで、利用者が自然に空間へ入りやすくなるよう工夫されていた点である。また、複数の入口を設けたり、トイレ同士の距離や配置を調整したりすることで、空間の境界を曖昧にしながらも安心感を確保していた。私自身も万博会場で実際に利用した際、一般的な公共トイレよりも圧迫感が少なく、空間全体が開放的に感じられた。また、案内表示も分かりやすく、多様な人が使いやすいよう工夫されていると感じた。一方で、男女の境界が曖昧であることに最初は少し戸惑いもあったが、それも従来の固定観念によるものだと気づかされた。今回の講演を通して、建築は機能性だけでなく、人の心理や多様性にも配慮することが重要であると感じた。


R206:片山絢賀

 今回の講演「建築の物語とは?」を通して、建築における物語とは、単にコンセプトを決めるのではなく、人や社会との関係の中で立ち上がっていくものだと感じた。特に印象に残ったのは、「つくって終わりではなく、できた後どうなるかまで見る」という指摘だ。建築は完成した瞬間に完結するのではなく、使われる中で新たな意味や価値が生まれ続け、その積み重ね自体が物語になるのだと思った。
また、理想の世界と現実の世界の間をつなげるものとして「物語」が必要であるという考え方も興味深かった。設計者の理想を押し付けるのではなく、現実の環境や多様な人の営みと接続するプロセスとして物語が存在するという視点は、建築をより開かれたものにする可能性を感じられた。
さらに、多様性を均質化するのではなく、それぞれの違いを残したまま共存させることの重要性も示されていた。人それぞれが異なる背景や価値観を持ちながらも同じ場を共有することによって、多層的な物語が生まれる。建築はそのような複数の物語を受け止めてくれる器であるべきだと感じた。
今回の講演を通して、建築とは完成された形ではなく、時間とともに更新され続ける関係性の集積であり、そのプロセスそのものが物語であると捉え直すことができた。今後は、空間の形だけではなく、そこで生まれる出来事や人の関わりまで設計をし、使われ続ける中で更新さえていく物語をつくっていきたいと思う。


R207:庵本未優 

 今回は「建築の物語とは?」と題して、斎藤信吾氏、根本友樹氏、田代夢々氏にご講演いただいた。万博のトイレの設計において「多様性」は非常に重要なキーワードであったが、この言葉一つに収まることのない多くの物語によって、建築という形にする行為は豊かになり、これに加えて個人のプロジェクトを通じて、概念や思想が目に見えるものに変換される建築の面白さを改めて感じた。万博のトイレの説明の中でも、ユニバーサルデザインのワークショップを経た、機能性と意思を反映させるような操作が印象的であった。根本氏がトイレの高さや位置関係が使用目的のカモフラージュになると述べていたことに関して、機能性を保ちながらも、意思や行動に意味がもたらされているのだろうと捉えることができた。また、田代氏は現実世界と理想世界の往復、これをつなぐ全てには物語が必要であると述べていた。現実での制約に対して理想を追求するという姿勢は重要であると考えているが、これが物語によってつながれるという認識はなかったため、今後は人々の想いである「物語」と形になるまでの過程としての「物語」の両方をもってしてできあがるものを大切にしたい。

R208:石井琢夢

 講演のタイトルである『建築の物語とは?』という問いに対して、設計におけるストーリーを思い浮かべる人は多いだろう。施主の要望から場所の歴史、敷地周辺のコンテクストなど、多角的な視点から設計根拠をつむぎ出し、さらには建築が立ち続ける未来への先行きまでを含めて一つの物語を構築していくという行為が、設計の中ではよく行われる。建築が合理性、機能性だけで建てられてきたならば、今頃似通った建築で世界はあふれているだろう。世界を彩る多様な建築たちには、それぞれの物語がある。

そういったいわば設計の根拠としてのストーリーは、全体を統括するために一貫性が求められる。それはコンセプトとも言い換えられる。しかし全体性を確保しょうとするあまり部分を排除してしまってはいなかっただろうか。全体のストーリーを大きな物語としたとき、個人や数人単位、あるいは部分的な場所を切り取ったときそこには小さな物語が存在することを忘れてはいけない。

斎藤信吾氏は設計活動の中で「小さな物語と大きな物語をどう統合するか」という課題に向き合っていた。その姿勢は万博におけるトイレ8の設計や西尾市の生涯学習センターの設計に如実に表れている。部分から全体を構成していくような作り方は、小さな物語に目をむける姿勢の表れと言って良いだろう。万博のトイレと生涯学習センターは、世代も文化も異なる人々が利用するという点で共通している。それぞれの利用者がもつ価値観や要求などの小さな物語に応答するように、多様な居場所づくりがなされる。

部分から建築を形作るとき、最終的にそれらを統合するか、あるいは雑多なまま残すかというところは建築の設計において意見が分かれるところである。その中で斎藤氏は統合を目指した。万博のトイレは半円状の塔を用いて、生涯学習センターでは全体にかかる大屋根によって異なる場所たちをひとつにまとめている。多様でありながらひとつという万博にも生涯学習センターにも共通する大きな物語に小さな物語を統合している。

今回の講演を通して、建築の根拠になるストーリーとしてしか「物語」という言葉を扱えていなかったことに気付かされた。多様な利用者を受け入れる箱をつくるためには、小さな物語がいくつも存在するという視点を忘れてはならない。

R209:市之瀬航生

 今回の講演では、設計のプロセスにおける物語の重要性と集団設計おいて他者との視点とどう向き合うかについて示唆を得ることができた。根本氏は万博のトイレという世界中の多様な背景をもつ人々が利用する建築において、「誰かにとっての使いやすさは、誰かにとってのバリアになる。」という限界を認めたうえで、ワークショップを通じて多様な意見を掬い上げていた。この無数の正解を前提とし、お互いの視点を重ね合わせる姿勢こそが設計の豊かさを生むのだと気づかされた。また、斎藤氏が提唱する「フルーツポンチ型」の多様性の捉え方も設計のヒントとなった。均一に混ぜるのではなく多様性を多様性のまま残す、個々の小さな物語を独立したまま残しながら、大屋根や建築的な枠組みによって緩やかに統合していく。このような一貫性を保ちながらも個別の居場所を無くさないという設計の視点を得ることができた。さらに田代氏が、「理想世界の追求がなければ、新しい建築ができない。」と語るように、行き詰った時こそ、一度主観的な理想世界に立ち返り、そこから現実世界へと繋ぎなおす反復の重要性を学ぶことができた。

今回の講演を通じ、「物語」とは単なる設計のコンセプトではなく、設計者や利用者がもつ多様な視点そのものであると感じた。今後は、自分が持つ違う視点を恐れず、他者の物語を掬い上げながら設計に取り組んでいきたい。

R210:内田朔弥

 イブニングセミナーを通して、建築は単に「形をつくるもの」ではなく、人の行為や記憶、都市との関係性を編み込む「物語」を持った存在であることを強く感じた。特に「建築の物語とは?」というテーマのもと、大阪・関西万博を対象に、都市構造や敷地条件、人々の動き、歴史的背景を読み解きながら建築を考えていた点が印象的であった。単体の建築物だけを見るのではなく、その周辺環境や時間的な変化、人々の活動との関係から空間を捉えていたことで、建築が都市の中でどのように意味を持つのかが伝わってきた。

また、分析においても図面やマップ、時間軸などを用いながら、多角的に敷地を読み解いていた点に説得力を感じた。特に、人間的なスケールや行為の変化を踏まえて空間を考察していたことから、単なるデザイン提案ではなく、「人がどう居場所を感じるのか」という視点を大切にしていることが伝わった。建築は完成した瞬間に終わるのではなく、そこに人が集まり、使われ続けることで価値が更新されていくという考え方にも共感した。

さらに、万博という一時的なイベントを題材にしながらも、その後の都市や地域にどのような影響を与えるのかまで考えていた点が興味深かった。イベント空間を「非日常」で終わらせるのではなく、日常へと接続し、都市の新しい関係性を生み出す可能性として捉えていたことに、これからの公共建築や都市デザインの重要性を感じた。今回の映像を通して、建築は物理的な器ではなく、人々の活動や記憶、都市の未来まで含めてデザインする行為なのだと改めて学ぶことができた。

R211:小山内里奈

 今回の講演を通じ、「多様性」という言葉が日本や海外に大きく広がっている中で、その概念をいかに丁寧に読み解き、万博のトイレ設計へと反映させているかを深く理解できた。

特に印象的だったのは、LGBTという概念自体がヨーロッパ発祥であり、必ずしも他の地域の文化圏と一致しないという指摘だ。ある利用者への配慮が、別の誰かの不利益や心理的な障壁を生む可能性を孕んでいることに気づかされた。ユニバーサルデザインにおける「誰でも」という言葉の危うさを認識し、今後は文化・体格・性格なの差異を丁寧に捉え、誰にどう使ってもらうかをより慎重に検討すべきだと感じた。

具体的な設計において、入口を円状に分散させて過度な干渉を避け、プライバシーを確保する手法には強い感銘を受けた。トイレは生活において不可欠な要素である。そこに注がれた緻密な配慮を、自身の今後の設計活動にも反映させていきたい。

R212:小島徹也

 今回のイブニングセミナーを通して、建築とは単に形をつくる行為ではなく、社会に存在する価値観や境界を問い直し、人々の関係性を再構築する営みであると強く感じた。特に「トイレ8」の設計では、ジェンダーやバリアフリーといった現代社会の課題に対して、従来の“男女を分ける”という常識を前提とせず、「誰もが使える場所」としてトイレを再解釈していた点が印象的だった。半円柱状の壁や距離感の操作によって心理的抵抗を和らげる設計は、単なる機能計画ではなく、人の感覚や行動まで含めて空間を考える建築の可能性を示していたと思う。

また、講演では設計プロセスに対する考え方にも多くの学びがあった。根本氏の「視点が違うのは前提でいい」という言葉からは、多様な価値観を受け入れる姿勢の重要性を感じた。さらに、田代氏の「理想世界と現実世界の反復」という考え方は、設計において理想だけでも現実だけでも成立しないことを示しており、両者を往復しながら論理とかたちを磨き上げていく必要性を実感した。

一方で、利用者から「分かりにくい」という意見があったことも興味深かった。誰かを包摂しようとする設計が、別の誰かにとって使いづらさにつながる可能性もある。この矛盾を含めて考え続けることこそ、現代建築に求められる姿勢なのだと感じた。今回の講演は、無形の思想を有形の建築へ展開していく過程を学ぶ貴重な機会となった。

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R213:後藤駿之介

 斎藤氏,根本氏,田代氏の講演より,根本氏からは何人かで物事を取り組む際やグループ活動の時の重要な視点「それぞれの視点が違うのは前提でいい」に気づくことができた。実際に取り組んで成功した人から聞くことができたのは重要だったと考える。田代氏からは理想世界と現実世界の反復による考え方を実例や経験を基に講演していただき,手順や思想を持って設計をおこなう必要性を知ることができた。斎藤氏からはワークショップの効果的に愛着を持ってもらう方法やワークショップの後にどのような手順でまとめていくといいかについてまなぶことができた。

自分は,今回の講演内容から一連の設計プロセスで気を付ける点について学ぶことができたと強く感じた。グループ活動になると意見の対立や違う話が出たときに少し違和感やもやもやしたものを感じてしまうことがあったが,自分には「違う視点がある」という考えが足りてなかったと反省するきっかけになった。また,案に行き詰った際や取り組んでいくときに悩み進まなくなってしまうことがある。その時に考えの反復をおこない進んだ上で振り返るような踏み出す勇気が必要だと講演から考えた。

グループ活動が苦手な自分には多くの気づきを得ることができた講演となったため,自分を振り返って今後の経験に活かしていきたいと思った。

R214:中野宏太

 

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R215:宮澤 太陽

 今回、斎藤、根本、田代氏の講演を聞き国際的な文化背景を再解釈することによる「建物のかたちの再構築」の可能性について考えるきっかけになったと捉えている。
 トイレ8では、トイレにおける男女やLGBTQ、バリアアフリーなどの人の特性と一般論としてのトイレへの公共的な配慮に対する設計者の再解釈が構想の基盤となっていた。その結果G賞をはじめ、今後のトイレへの可能性が垣間見えるような手ごたえを獲得することができている。これらのことから、既成概念や社会構造に対する疑いやと捉える角度を変えることで、設計者の仮設として論理を再構築する。それを、かたちに落とし込むことで新規性を内包した空間やかたちにつながるのではないだろうか。また、設計者の仮設においては、田代氏の理想世界と現実世界という考え方が重要だと考える。それは、仮説の世界観とかたちへの展開に際して、現実世界のどこに着地させるか、位置づけのようなものを具体的なビジョンを持っていることだ。その感覚やセンスはインプットとアウトプットを繰り返すことで磨いていくことができるのではないだろうか。

田代氏の国際的な経験からも気づかされることがあった。上記のことにも関係することだが、既成概念がベースとなり仮説を作るとすると、国内だけではなく世界にも目を向けることで、より多角的な視点を持つ頃ができる。さらにインプットの対象も何十倍にも膨れ上がる。私の興味からでも段階的に視野を広げていく。

本公演では設計者の思想や思考といった無形から、有形のかたちへと展開することに関する話であったと捉えている。学年問わず学生が意識できていないことだと感じた。

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R216:相原秀星

 

R217:打越優音

 今回は大阪・関西万博2025でトイレ8の設計を行った斎藤信吾氏、根本友樹氏、田代夢々氏に講演していただいた。今回の設計ではジェンダーレストイレという時代に沿って必要とされている新たなトイレが提案されている。従来の形式では男性用、女性用、バリアフリーに対応した多機能トイレの三つがそれぞれ個々に設けられていたが、今回の提案ではその枠組みが再解釈され、ジェンダーレスに配慮した「共用」のゾーンが計画されている。また、円形状の敷地の中にトイレが設けられており、様々な入り口から入れるようにするため、男性ゾーンや女性ゾーンと共用ゾーンの割合が約1対1になるようにスペースが作られていた。それに加え、半円柱状の形をしたトイレがそれぞれのスペースを囲むように配置されつつ、トイレ同士の距離を近づけたり離したりすることで、複数の入り口を設けつつ男性ゾーンや女性ゾーンと共用ゾーンの境界が曖昧になることが、ジェンダーレスの方でも入る抵抗感を払拭することが出来るようになっているポイントであると感じた。また、今回の設計の空間の作り方は、入る抵抗感を払拭するという点においてとても長けていると感じたため、今後の自分の設計において今回の知識を取り入れていきたいと思った。

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R218:加藤緋奎

 今回のレクチャーを通して、建築が単に空間をつくるだけでなく、多様な人々の関係性や居場所を形成する役割を持つことを再確認した。特に印象的だったのは、万博会場のトイレ8に表現された空間設計の考え方である。世界中から異なる文化や価値観を持つ人々が集まる場だからこそ、男性・女性という単純な区分ではなく、誰もが心理的なヒエラルキーを感じずに利用できる空間づくりが重視されていた。ユニット配置によって緩やかに領域を分け、性別の境界を強調しない設計には、違いを排除せず共存する姿勢が表れていると感じた。また、ユニバーサルデザインのワークショップの話も興味深かった。視覚障がい者は壁伝いに移動するため狭い方が安心しやすい一方、車椅子利用者は広い空間を必要とする。このように誰にでも優しい空間をつくろうとしても、全員にとって快適な環境を実現することは難しい。その点で、トイレ8のように、多様な人を1つの空間に無理に合わせるのではなく、それぞれの個性や必要に応じて選べるユニットとして展開するという発想に新しさを感じた。建築には、人の違いを受け入れ、多様な人々がともに過ごせる環境を作る力があると感じた。田代氏の話からは、建築の物語性について学んだ。パリの公園で人々が椅子を自由に動かし、自分なりの居場所をつくっている姿やマルシェなどが行われ人々の日常や交流の場として機能していたことが紹介されていた。人が自由に過ごし、人間らしく過ごせる都市空間の大切さを考えさせられた。さらに、斎藤氏の、市民とのワークショップを通して市民にとって愛着ある空間をつくるという話から、建築は建築家一人で完成するものではなく、使う人々との対話によって育まれていくものだと感じた。今回のレクチャーを通して、建築とは人の多様性を受け止め、社会とのつながりを生み出す重要な役割を持っているのだと実感した。思想や背景の異なる人々が集う空間において、隣人との心地よい距離感をどう設計するかという今回学んだ視点を、今後の自身の建築設計にも活かしていきたい。

R219:白倉海翔

 

R220:野口健人

 今回のイブニングセミナーでは、大阪・関西万博の「トイレ8」を設計した斎藤氏、根本氏、田代氏の3名による講演を聴いた。

今回の設計で提案されていたのは、ジェンダーレスという時代背景に合わせた新しいトイレのあり方だ。円形の敷地の中で、男性用・女性用のゾーンと「共用」のゾーンを約1対1の割合で配置し、半円柱状の壁で境界を曖昧にする手法が取られていた。トイレ同士の距離感を操作することで、心理的な抵抗感をなくし、誰もが入りやすい空間を作るというアプローチは、今後の自分の設計においても非常に参考になる。

設計プロセスにおける心意気についても、学ぶべき点が多かった。根本氏の「それぞれの視点が違うのは前提でいい」という言葉は、グループ活動においてあまりうまく自分の意見を言うことができない自分にとって大きな反省材料となった。意見の対立にモヤモヤするのではなく、多様な視点があることを前提に動く姿勢が自分には足りなかったと感じる。また、田代氏が述べた「理想世界と現実世界の反復」という考え方も案に行き詰まった際、理想と現実を往復しながら、振り返りつつも一歩踏み出す勇気が必要だと強く実感した。

斎藤氏からは、ワークショップを通じて利用者に愛着を持ってもらう方法や、その後のまとめ方について具体的な手順を学ぶことができた。本講演は、設計者の思想という「無形」のものから、実際の建築という「有形」のかたちへと展開するプロセスを考える貴重な機会となった。今後は国内だけでなく国際的な視点にも目を向け、自分の興味から段階的に視野を広げていきたい。今回の学びを自身の経験として活かし、設計における論理の再構築を意識して取り組んでいくつもりだ。

R221:吉野仁輝

 今回の斎藤信吾氏、根本友樹氏、田代夢々氏による講演「建築の物語とは?」を拝聴し、タイトルにある「建築の物語」とは、自らが計画する建築を媒介として生まれる、人・モノ・場所のさまざまな関わりによって紡がれるストーリーであると感じた。

特に印象に残ったのは、「トイレ8」に関する内容である。私自身、設計を行う際には、ビルディングタイプや各諸室の基本機能を基盤として建築計画を進めることが多い。しかし、トイレ8では、単なる「トイレ」という基本機能に留まらず、その役割をより拡張的に再解釈し、多様な場所性を与えることで、単に機能を備えた建築としてではなく、巨大な都市空間の一部として自然に溶け込むよう計画されていた点が非常に印象的であった。

万博におけるトイレは、もちろん一般的なトイレとしての役割を担っている。しかし同時に、万博という特殊な場所性の中では、休憩、待機、偶然の出会いの場、さらには万博という一種の巨大都市における「余白」としても機能している。そのように捉え直すことで、万博という大きな「人と建築の物語」の中に、新たな記憶や体験を生み出す場が成立しているのだと感じた。言い換えれば、そこでは本編とは別に展開される “Another Story” のような小さな物語が無数に生まれており、そのことが新たな公共性の創出につながっているのではないかと思う。

今回の講演を通して、建築を設計する際には、どうしても自身の設計対象そのものに意識が向き過ぎてしまい、周囲の建築や人の流れへの視点が希薄になってしまうことがあると改めて感じた。そのため、設計の中盤や終盤においては、一度立ち止まり、自身の計画を俯瞰的・抽象的に捉え直す姿勢が重要であると思う。そうすることで、建築が独立した存在として一人歩きすることを防ぎ、周囲の人やモノ、場所との関係性をより豊かにし、場所性の向上へとつなげていけるのではないかと感じた。

R222:青木柊真

R223:荒木才貴

 今回のイヴニングセミナーでは、「トイレ8」の設計を通して、建築は単に機能性を満たすだけではなく、人の心理や社会背景まで考慮してつくられていることを学んだ。特に印象に残ったのは、男性用・女性用・共用のゾーンを同じ割合で配置し、その境界を曖昧にすることで、誰でも利用しやすい空間を実現していた点である。従来のトイレの固定的な考え方を見直し、ジェンダーレスという現代的な課題に建築的な視点から向き合っていることに新しさを感じた。また、半円柱状の壁や複数の入り口を設けることで、利用者が感じる心理的な抵抗感を和らげる工夫がされていたことも興味深かった。建築では、見た目や構造だけではなく、その空間を使う人がどのように感じるかを考えることが重要なのだと実感した。さらに、講演の中で語られていた「理想世界と現実世界を行き来しながら設計する」という考え方も印象に残った。理想だけを追求するのではなく、現実的な条件や利用者の視点を踏まえながら設計を進めることで、新しい建築や空間が生まれていくのだと感じた。今回の講演を通して、建築は単に形をつくるものではなく、人や社会との関係性を考えながら設計していくことが大切だと学ぶことができた。

R224:安藤勝美

 

R225:石井克弥

 

R226:木澤佳苗

 

R227:佐藤天馬

 

R228:中塚桜子

 万博の中にトイレをつくるということは、万博におけるトイレとは何か、そこから考える必要があると言っていた。つまり、トイレというのは「誰かのためにある」というより、「どんな人でも使える場所」であるということで、それはそこに来る人の背景が違うからであるととらえられる。

背景の一つにLGBTがある。トイレはジェンダーを最も区別してしまう建築であり、必ず誰かは使えない空間が存在してしまう。私は正直、トイレというものにそこまでの建築的要素があると思っておらず、どんな設計をするときも、ある程度のテンプレートの中ででしか考えてこなかった。しかし、この講義を聞いて、トイレに対する考え方がガラッと変わった。というのも、「使う人」にどのような使い方をしてほしいかという考え方と、「使えない人」のことを考えての設計というのでは、トイレはきっと前者でもあり、同時に後者でもある。それを“配置”で解いていこうとするトイレ8の建築姿勢は、今後のトイレの可能性を見出していると思った。

講義の最後、質疑応答の時間に、実際にトイレ8を訪れた人の意見を聞いた。「白を基調としたシンプルでおしゃれなトイレ。だが、中か少しわかりにくい。目の前にあった『島の蜃気楼』のほうが利用者としてははっきりとした区別がされていてわかりやすく、利用者も多かった。」

講義全体を聞いたうえで、この意見を聞き、“建築“だけが「使えない人」のことを考え、その人を考慮すればするほど、これまで「使う人」だった人が「使いづらい人」となってしまうこともあるということが分かった。

R229:沼尻乃亜

 今回の建築レクチャーでは、建築を設計する際に単に形や機能を考えるのはなく、その背景にある社会的・文化的な文脈まで含めてとらえることの重要性を学んだ。

万博という場は、国や文化、価値観が異なる多様な人々が集まる空間であり、LGBTをはじめとする性的マイノリティへの配慮も不可欠である。しかし、国によってLGBTに対する考え方は大きく異なり、必ずしも受け入れられているとは限らない。このような複雑な背景の中で設計を行うことの難しさと同時に、それでも多様な人々に開かれた空間も目指す姿勢が重要であると感じた。斉藤氏の設計では、特定の利用者に偏らないよう、ヒエラルキーを感じさせない構成や多方面からアクセス可能な動線計画がなされていた点が興味深かった。また、天井を高くすることでにおいを上部に逃がす工夫や、空室状況が一目で分かるようドアが自動で開く仕組みなど、環境的・機能的な配慮も細やかであり、建築が持つ問題解決の力を実感した。さらに、UDWS(ユニバーサルデザイン・ワークショップ)の考え方として、「障害の種類によって快適なトイレは異なる」という前提に立つことが示されており、「誰にとっても同じ」ではなく「それぞれにとっての最適」を考える視点の重要性に気づかされた。

また、建築の実現プロセスにおいても、木造は現地施工、鉄骨は工場生産といったように、それぞれの特性に応じた合理的な手法が取られており、設計だけでなく生産や施工まで含めて建築であるという認識を深めることができた。

田代氏の「理想が現実の発想に役立つかもしれない」という言葉からは、現実的な制約の中だけで考えるのではなく、一度理想を思い描くことが新たな発想につながるという設計態度の重要性を学んだ。

今回の講演を通して、建築は単なる空間のデザインではなく、社会や人間のあり方と深く結びついた行為であると改めて感じた。

R230:松崎美咲

 今回のイブニングセミナーでは、設計のプロセスだけでなく、ワークショップで利用者の声を建築の設計する段階から取り入れていくということの大切さを学ぶ貴重な体験になった。根本氏の話では、世界の中でも同性間の関係を保護する国、婚姻を認める国がある一方で、反対に犯罪とみなし死刑とする国があること、トイレひとつとっても女性が女性用トイレを使うことがようやく認められる国があることに驚いた。話を通して個人的には、“外はあいまい、中は分かりやすく機能的な建築”が多様性を多様性のままにできる在り方なのではないかという考えに至った。「UDWSユニバーサルデザインワークショップ」では、視覚障がい者は手で空間を把握するため狭い方が好ましいが、車イス使用者にとっては動きやすいため広い方が好ましい、という具体的な意見が得れた。また更に、斎藤氏の愛知県の生涯学習センターの話にも3つのワークショップが挙げられた。これらの意見が、実際の建築に活かされていると思うと、“ワークショップ”という利用者の声を聴く時間の大切さを改めて感じた。斎藤氏の「全てがオモテになるように」という言葉が気になった。単に建物のファサードに対しての言葉だけではなく、利用者、機能、運用、都市との関係によって様々な意味を含む言葉のように感じたからだ。今回3名の建築家それぞれの話を通して、今後は、様々な国籍や性別だけでなく背景や宗教、体格など、多様な人々が多様なまま過ごせるようなオモテの空間を生み出せるよう心がけて、設計していきたいと思う。

R231:溝口礼央

 

東京電機大学 地域・建築デザイン研究室|菅原大輔研究室

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