【レクチャーレポート】68~85
R68:大場玲旺
今回は様々な庭園デザインを手掛け、活躍される桝井淳介氏に講演いただいた。この講演会に参加するまで、自分の意識のどこかでランドスケープというものは"敷地に建築を設計し、余った敷地を埋める、あるいは建築を引き立てるもの"のような感覚で捉えていたかもしれない。現にこれまでの設計課題の図面や模型もまずは建築を設計し、無造作にボンボンと植栽を植えていくようなことが多かった。しかし今回の講演は私の中のそのイメージが変わるきっかけとなった。
桝井氏は建築と造園の境界を曖昧にするという表現を何度か用いていた。桝井氏は建築とランドスケープを一体となった空間として捉えていると感じた。建築とランドスケープをシームレスにつなげる技法をいくつか紹介して頂いた。特に自分が印象に残ったのは、石畳の端をあえて整えず、凸凹した敷き詰め方にするというもので、境界を曖昧にすることだけでなく木の根っこが成長しブロック1つはがれても美しさにはさして影響が出ないデザインを取り入れているという考え方が、桝井氏が自然を支配するのではなく、自然が持つ予測不可能な側面や変化を理解し、受け入れている様子が読み取れた。
建築物の形状や素材に関しても石や木の素材には表や裏があり、その置き方によって伝えるメッセージが変わるというようなことを話しており、前回ご登壇いただいた佐野文彦氏と共通する考え方や観察の仕方を持っていて面白いと思った。
もう一つ造園のキーワードとなるのは「フォーカルポイント」だと感じた。例えば飛び石を歩くとき、視線を下に誘導させるためふと気づけば違う景色に変わっていて感動するというように、人の眼球の動きや心理を分析し自然の風景や特定の景観に焦点を合わせるようデザインの考え方がとても素敵だなと感じ、これからランドスケープの設計でぜひとも意識してみたいと思った。
R69:庵本未優
今回は造園の経験を積んだのち、ランドスケープアーキテクトとして活躍されている桝井淳介氏にご講演いただきました。私はこの講演を通して、石一つをとっても機能(講演においてはゲート性)を持たせることでそれはランドスケープとして成り立ち、人々の生活に溶け込みつつも豊かさを与えるものであると実感しました。そこでなぜそのデザインをもって成り立つのかと考えたときに、講演中にお話しされていたフォーカルポイントにあるのではないかと思いました。それだけを見ると何の変哲のない石に思えたとしても、少し離れた場所から見ると目印になるかもしれない、”ものがたり”の、ある流れの一部であるかもしれない、といった捉え方をするとその石は意味を成すものになり、これは視覚に限らず人々を誘導するうえで気づきになる点でした。これまでランドスケープを考えるうえで周辺環境との関係を表現するといっても建築物に付随した、狭い範囲でしかとらえられていなかったように感じ、全体の流れとしてのデザイン、その中での “緩急”としてのデザインがそろうことでランドスケープが成り立つことを踏まえて今後の設計に取り組みたいと思いました。
R70:打越優音
今回の桝井氏の講演を通して、ランドスケープを設計する際の知見を深めることが出来た。
これまでの自分の設計においてランドスケープという存在は建物との繋がりを大事にしようと考えていたもののその繋がりを上手く考えることが出来ず、結果的に建物と何も繋がりのないものがほとんどだった。しかし、桝井さんが建築と造園の間の空間を曖昧にすることを毎回設計する際に心掛けていることを知り、その空間こそが建物との繋がりを生んでくれる場所であると強く印象に残った。
また、飛び石を歩く時の視線の誘導の話が自分の中で特に印象に残っており、桝井氏がこの話をしている際に、自分は実体験をもとにあるいたらどうなるかを想像したところ、飛び石によって目的地とは別の方向へ誘導されている自分の姿が頭の中によぎり、そうした仕掛けがランドスケープを面白くしていくための重要なポイントだと感じ、こうした仕掛けを今後の設計で考えていけるようにしたいと思った。
R71:蓮沼志恩
文化伝統の思想や手法を用いて、ランドスケープの枠に留まらず活躍されている桝井淳介氏の講演を通して、私はフォーカルポイントによるシークエンスの作り方について学びを得た。
講演の中で特に印象に残ったのは、感動体質を作るための5つのコントロールである。人間の身体性に着目したその手法を聞いたとき、普段何気なく感じることもコントロールされていると気づかされた。中でも「光と影」のコントロールでは、陰と影の空間で人間が最も鮮やかに感じるのは陰の部分であり、人間の瞳孔が最も開くためであることを知った。
ランドスケープによく用いられる素材の中に石がある。1つの石の中にもたくさんの色があるのだが、日常生活の中でそのカラフルさに気づくことは少ない。しかし、「光と影」のコントロールをすることで石の色の鮮やかさに気づき、感動することができる。陰と影による色の見え方まで操作する桝井氏の設計手法は非常に興味深い学びとなった。
私はこれまでシークエンスを意識した設計をする際、空間の広がりや視線の操作ばかり考えていた。今回の学びは、今後私がシークエンスを意識した設計をする際の視野を大きく広げてくれるものになるだろう。
R72:一ノ瀬愛弓
今回のFAレクチャーでは、「ものがたりをかたちに」をタイトルに桝井氏にご講演い
ただいた。
はじめに日本庭園についての話があり、誘い込みのポイントを設けて足元に注意が向くような道があり、そこを抜けた先に視点場があることで視界に景色が突然現れたように感じられる手法(行動抑制)を学んだ。私は日本庭園を見ることや寺社仏閣を訪れること、ハイキングをすることが好きだが、どの趣味もこの手法を体験できるものであることに気づいた。特にハイキングでは、足元をよく見ないといけない場面が多く、休憩場所や頂上に来た時に周囲を見渡す。これは日本庭園でいう路地と視点場と同じようなものだろう。そこまでの道が険しいことで頂上に登った時や休憩した時に視界に入る景色が特段に美しくなる。また、ピクチャーウィンドウのようなフレーミング作用は建築で景色を切り取るような操作がされなくても、人の意識をちょっと景色からどこかへズラすことでも表すことができるのだろうと学び、自分の好きな空間の実態を少し知ることができたし、ランドス
ケープの力に気づかされた。
公演を通して、ものがたりとは実体験であり、それをランドスケープや建築空間でどのように表現するのかがかたちであると感じた。自分の好きな実体験をランドスケープや建築空間でどのように表していけるのか、今回の公演で学んだことを吸収して活かしていきたい。
R73:菅谷心洋
私はこの講演を通して、絵で示すことの重要性と実務的なことへの理解が深まったように感じる。桝井氏には、施工事例のコンセプトやこだわりだけでなく、それらを実物に落とし込んでいく術を教えていただいた。ストーリーを平面に落とし、実際に素材を探しに行く。感動体質を作るための仕掛け、一連の流れや素材ごとの解説などは全て、桝井氏の描く絵と共に学ぶことができ、解像度が上がり非常に理解がしやすかった。
これは桝井氏の実際のプレゼンシートも同様であり、あたかも桝井氏の話に付いていけるような、心が躍ってしまうような、クライアントの感覚になって講演を傾聴していた。人に何かを伝えるとき、手を動かして想像を具体化することは非常に重要であると感じた。
砕石場について「地球を壊す環境破壊」と表現されていたことは、来年度から内装デザインに携わる私にとって身近で、真摯に向き合っていくべき事柄だと考えた。
桝井氏は、クライアントが幸せだと感じる瞬間や、クライアントとその知り合いの会話まで想像を膨らませていた。ものがたりをかたちにして、ものがたりをつくっていく。素材や環境に対しての理解と、時間軸のある空間やランドスケープデザインは、今の時代に与えるべき価値を見出してくれるのだと感じた講演であった。
R74:後藤駿之介
今回は,国内外でランドスケープデザインを手掛け活躍されている桝井淳介氏にご講演をいただいた。自分はランドスケープや庭園デザインは全て新規の材を用いて造られていると思っていた。しかし,今回の講演会を聞いて,実際に路面電車の軌道石を再利用していることを粋なことして捉えられていることや再利用する部材の方が新しい材に比べて値段が高くなるということから部材に新たな価値を見出し利用していくことへの大切さについて感じ取るきっかけになった。
桝井氏はものがたりに加えて視点の向き・流れについて意識していると感じた。段階的に1つ1つに目を向けさせ最後に大きな1つのまとまりとなるような見せ方・感じ方をさせているように読み取った。自分は1つのまとまりでしか景色を捉えることができていなかったため,要素1つ1つを利用者・顧客・ものがたりの主人公となる人物が感じ取ることができるように今後は設計に取り組んでいきたいと思った。
また,今回の講演会で「陰影」「土緑石灯水」「感動体質をつくる」において共通で感じたこととして,1つ1つの字の意味を使い分けていると思った。「光」だけでなく「灯」や「陽」,「影」だけでなく「陰」などの同じように解釈してしまうものを正しい意味を持って理解して使い分けていることに学びを得ることができた。自分は正しい意味であるかを確認しないで使ってしまっていたため,意識して使っていきたいと思った。
R75:石井琢夢
ランドスケープアーキテクトの桝井淳介氏による講演を聴かせていただいた。卒業設計の制作に勤しむ中、扱う敷地が広大であるがゆえに全体を取りまとめるランドスケープをどうデザインしようか悩んでいたところでの講演だったため、参考になる知見を多く得ることが出来た。多岐にわたるランドスケープデザインの手法をお話しいただいた中で、人を誘い込むフォーカルポイントを設けたり、視線や心拍数、行動抑制などによって感動体質を作り出したりするなど、身体感覚を意識した設計手法が新鮮に感じた。というのも、私はこれまで平面的にしかランドスケープを考えることが出来ていなかった。人間がランドスケープを見るのは鳥瞰ではなくアイレベルであり、視界に広がる風景や五感で味わう空間の妙味をイメージすべきであるのに、植栽の配置計画や動線計画など、俯瞰的な視点しか持てていなかったことに気付かされた。これはランドスケープに限らず建築の設計においても陥ってきた私の悪い癖であった。以前、数寄屋建築を手掛ける佐野文彦氏の講演を拝聴して以来、素材というものに興味を持つようになり、徐々に建築の細部を意識するようになってきている。今回の講演は、私がランドスケープを見るときの視点を変えてくれるものになっただろう。全体と細部を相互に行き来する柔軟な思考を心掛けながら、今後も設計力を磨いていきたい。
R76:市之瀬航生
今回は、国内外の庭園を手掛け、ランドスケープデザインの分野で活躍する桝井淳介氏にご講演をいただいた。講演を通して私のなかでランドスケープデザインに対する考えが変わったと感じる。講演を聴く前は建築とランドスケープをどこか別の空間デザインとして捉えていたが、桝井氏は庭園からしたら、建築からしたらと境界をあいまいにする中間領域をデザインされていて、建築空間とランドスケープをつながりのある空間としていると感じた。実際のプロジェクトでものがたりをかたちとして表現する際に建築空間も取り入れてデザインされた事例もあり、建築の壁や内部空間まで一体に捉えデザインすることで建築とランドスケープの境界をあいまいにしていると感じた。また、ランドスケープをデザインする際に、視線の誘導や心拍数、行動抑制などココロに刺激を与える操作として身体の感覚を設計に取り込んでいることに自分の設計では考えられていない部分を感じた。
手前に視点場を設けることで奥行をもたせ、視点の移動を楽しませるなど身体の感覚を設計に取り組んでいくことで、細部にも意識を持たせることができると感じる。今回の講演はランドスケープデザインの視点を変えるものになり、今後の設計にも細部を意識した思考をいかしていきたい。
R77:小山内里奈
今回は、ランドスケープを中心としたさまざまな活動で活躍されている桝井淳介氏
にご講演頂いた。
その中でも印象に残ったのは感動体質を作る中での視線の動きである。 感動する場面は人によって変わるため、今までは根拠なく設計してしまうことが多かった。桝井氏は、感動の中には必ず身体の動きも関係しているため、瞳孔の運動、視線を超えた首の運動によって心拍数があがり、感動させる一つの要因につなげることができると話していた。超高層建築のコンバージョンを卒業制作としている中でこのお話を聞き、超高層のデメリットでもある視線からはみ出すような圧迫感は、設計次第で視線の動きを楽しませ、感動体質を作ることができるのではないかと気づくことができた。
また資源の再利用とは、自然環境の社会問題の解決策として使われることが多いと思うが、それだけでなくデザインの観点からもアップデートするという意味で元のものをよりよくできる要素を持っていると聞き、これは資源だけでなく建物にも関係することだと感じた。既存の建築を直すだけでなく活かす意識を今後の設計において大切にするべきことだと改めて今回の公演で学ぶことができた。
R78:宮澤太陽
ランドスケープデザイナーの桝井淳介氏の講演を通して、設計における視点の考えか
たや解像度、素材の選定方法に関する考えが変わったと感じる。師匠の影響による仏教由来の伝統的な考え方、作品ごとのものがたりを設計落とし込むことで空間の解像度が上がり、説得力のある空間づくりにつながっているのだと感じた。ランドスケープや空間を構成する際に上記のことはもちろん、ヒューマンスケールで考えフォーカルポイントを設けることで行動のコントロールを行う、素材の面や陰影などひとつひとつの操作に理由がある。そうすることで初めて、素材選定や色彩表現など、提案の細部まですべて1つにつながる。実際の空間からものがたりを体感し感動体験を提供することができるのだと感じた。最も、今回の講演で印象的だったのは桝井さんの仕事に対する姿勢だった。講演を聞く中でランドスケープデザインを心の底から楽しんでいると感じた。その姿勢が、素晴らしい作品作りに通じているのだろう。
R79:山内結稀
文化伝統の思想や手法を用いて空間の庭園デザインに取り組み、庭園文化の魅力を発信している桝井氏にご講演いただいた。私は特に素材に関する話が印象的に感じた。桝井氏は素材を再利用することは「活き」であると感じ、造園には面白い感覚があるということを説明していた。桝井氏はどんなデザインを手掛けるときも「そざい」との会話を理念に置いており、庭園に使用する石を実際に見て選び現場で指導する。私は庭園をみるとき、石はすべて同じようなものと捉えてなにも考えずにいたが、実際はその石にもどんな場所にあったかやどうやってできたかなどのプロセスがあり、それが重要であると分かった。また、それぞれの石にはいくつもの色やかたちがあり様々な文化や伝統、印象を連想させることができる。そして、その石や木は自然のものであることから、私たちが庭園デザインをするにあたって山や川から素材たちを借りていると捉えることができる。人間による自然破壊が問題視されている現代を生きる私たちにとって素材は大事なものという感覚は大切にしていくべきであると感じた。また、造園する意識として、誘い込みのポイントをつくったり、建築と造園の境界をあいまいにしたりするという点は今後の設計に役立てていきたいと思う。
R80:橋本咲紀
今回は国内外では留まらず世界でもランドスケープデザインを手掛けている桝井淳介氏にご講演いただいた。
ランドスケープ課題を通してランドスケープに対して、広い敷地だとどうしてものっぺりしてしまうと感じており、すべての場所に意味を持たせることが難しいと感じていた。
今回桝井氏は、造園と建物の境界を区切り過ぎないことを、人間の視点の移動について強く語っていた。またこの二つを実現するにあたり、素材へのこだわりや現場での活動などがあげられていた。特に視線の移動を重視した設計に関しては、人間の視線の上げ下げ、それによっておこる心拍数の上昇、瞳孔の変化に合わせた色彩の使い方など、人間がランドスケープを見ることを操作することができるという点は、自分が今まで着目しなかったランドスケープの在り方で非常に面白いものだった。
さらに自分の考えを物語とし、形にするまでの流れをお話いただいた。特にすでに建物が建っている状態のところに付属させるような形のランドスケープは設計が難しいと感じていたが、桝井氏はその建物や、クライアントが思っている、大切にしていることから着想を得て、粗密の変化をつけることによって、「建物に付属しているランドスケープ」ではなく「建物と一体となるランドスケープ」を作ることが分かった。
ランドスケープへの関心が非常に高い私にとって新たな視点やランドスケープのさらなる可能性を見つけるきっかけとなるような講演だった。
R81:羽山和
今回の桝井氏の講演を通して、多方面への配慮までされた素材選びの重要性と、二の次にされがちなランドスケープでも考え方次第で建築の主幹にもなりうる可能性の理解が深まったと感じている。実際の施行事例や現場で使われた材に触れたこと、また、実務的な面から、施工までの一貫性にこだわって自らが携わっていることで、デザイナーに留まらない桝井氏からしか学べない、大変説得力のある講演内容であった。
講演の中でも特にフォーカスされていた、建築と造園の境界を曖昧するという技術には、素材選びがその1部に含まれること、眺めるだけの造園ではなく、仕掛けのある造園にすることで人間の感動体験を引き出すことが含まれ、どちらも共にデザイン性だけではたどり着けない領域までを表現する桝井氏の熱意が最も感じられた部分であった。
また、タイトルでもあった、ものがたりや建物は完成し終わった後での造園の依頼の場合では、ものがたりの逆算という言葉表現があった。てっきり、着想点は分かりやすいヒントがありきで、ものがたりを考えているかと思ったが、周辺環境のような有形物から着想を得るのではなく、クライアントからしか読み取れない無形物を上手く形にし、それをものがたりに消化しきることで、強引さのない、空間表現の美しさが完成すると思った。そんな考え方を今後の設計にも活かしていきたい。
R82:加藤緋奎
桝井氏の講演を通して、ランドスケープデザインと建築の関連性について考えるきっかけになった。例えば、外構と風除室のデザインによって建築と造園の境界をあいまいにし、利用者が自由に捉えることができる空間をつくることができたり、建物の中から見た時の視線の誘導をコントロールすることで、ランドスケープの見え方が変わったりするなど、両者の相互作用を考慮することがより良い空間を実現するために重要であると感じた。
また、素材に関する話に関しては、石などの素材を「地球から借りている」という表現を用いていたことが印象に残った。この言葉からは、ランドスケープや建築に限らず、ものづくりにおいて素材を大切に扱うことの重要性が伝わってきた。路面電車の軌道石などの新品なものよりも高価であることが多い古材をあえて用いることなど、造園における粋の考え方を知り、持続可能なデザインが求められる現代において、素材の価値を再認識し、責任を持って使用する姿勢が重要であると感じた。
R83:野口健人
今回の桝井淳介氏の講演を通じて、リノベーションに対する自分の思いを改めて再確認することができた。私はこれまで、使われていたものが新しい形として受け継がれていくことに対して素晴らしさを感じていたが、それを言語化するのが難しかった。しかし、桝井氏が古材や再利用素材を「粋」と捉え、それを新たな空間に活かすことで、素材が持つ歴史や物語を継承するという考え方を示されたことで、私自身の考えが明確になった。
特に「素材との対話」を重視する姿勢に共感し、単に新しい素材を使うのではなく、既存の素材に込められた価値を大切にするという視点は、私が理想とするリノベーションのあり方に通じていた。今後も、この視点を大切にした設計を心がけ、空間に新しい価値を生み出していきたいと感じた。
R84:白倉海翔
今回は国内外では留まらず世界でもランドスケープデザインを手掛けている桝井淳介氏にご講演いただいた。
この講演を通した中で、素材や材料への向き合い方が印象的であった。桝井氏は自身のボキャブラリーから理想の素材を推測すると仰っていた。だが、木や石には推測と全く同じものはなく「そざい」との会話から選定を行なっていた。この会話という表現が素材へのこだわりを感じた。
私は、設計において大まかな素材しか決めない。「ランドスケープにおいても、どこの、どの素材を使用します。」とは言ったこともない。だが、こういったこだわりがあるからこそ、設計が成り立ち、魅力的な物になっているになっているのだと感じた。そのため、この講演を学びとし、自身の設計においても素材まで踏み込み会話を行いたいと考えた。
また、絵の重要性も理解した。どの様な構成にするのか、デザインにするのかを絵にすることによって視覚化し、情報共有を容易にすることが可能であると感じた。今回の講義においても、解説が絵と共にあることにより、頭でイメージすることが可能となり、理解がより深まったと感じた。そういったことから、絵における表現は必要不可欠なのではないかと感じさせられた。
R85:相原秀星
今回は、ランドスケープ・庭園デザインなどを手掛ける桝井淳介氏に、ご自身の描かれたスケッチやクライアントへの説明の際に実際に使用されたプレゼンテーション資料などを交えてご講演いただいた。
今まで自身の設計でランドスケープを明確な根拠を持ってデザインできたことがなかったが、講演の中でご紹介いただいた事例やその解説を通し、今後の自分の設計に反映させることができる思考を学ぶことができた。
桝井氏からは徹底した “素材” へのこだわりと柔軟さの両面が伺えた。描かれたものがたりをかたちとして表現するにあたり、何をどのように用いるのか、さまざまな効果的なしかけとともに実に丁寧に練られていた。一概に木や石と言っても、その種類や大きさ、いろかたち、配置の仕方などによって見えてくる風景は違ってくる。納得できるまで素材選定を行い、事前に仮組を行いながら検討していく姿勢が、よりよい庭園を生み出していくのだと感じた。また、そうした自然素材を「地球からの借り物」と捉え、素材そのものの魅力を活かしたり、再利用したりする姿勢に感銘を受けた。