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【レクチャーレポート】55~67

2024年度-ポスター佐野文彦氏_FAレクチャー.jpg

R55:蓮沼志恩

 数寄屋大工での経験を活かし、建築からアートまで領域を横断して勝ち訳されている佐野文彦氏の講演を通して、数寄屋大工の素材への考え方を活かした空間づくりについて学ぶことができた。
 数寄屋建築では例えば木材ではなく、木という生き物をどう扱うかを考え、丸太のどこを切ると美しいか、建てるときにどの面を正面にすると美しいかを考えて建物をつくることを知った。私たち学生は実際の素材に触れて建物を考える機会はないため、資材としてしかとらえていなかった私にとって数寄屋建築は質素でありながら洗練されて見え、意匠の奥深さを感じた。
 講演の中で特に印象に残っているのは、大分県で新たに完成したトンネルを開通するまでの間に飲食や宿泊ができる「耶馬渓トンネルホテル」プロジェクトである。数寄屋建築での経験を、コンテクストへの向き合い方へ捉え直して昇華していると感じた。テンポラリーな空間とはいえコンテクストにしっかり向き合い取り入れていく姿勢は、自分の興味に近いこともありとても学びとなった。
 また、木を取り巻くダイアグラムでは日本での木に対する価値観が偏っていることを知り、人工林の価値の問題から木を知ることの重要性を強く感じた。

R56:寺崎唯純
 今回の講演では佐野文彦さんにご講演いただき、ご自身の数寄屋大工時代の経験談やアートプロジェクトを交えながら数寄屋建築に対する考え、素材の活かし方についてご説明いただきました。

 数寄屋建築は、自然のプロポーションを持たせた空間にするために、1つの木を切って木目の繋がった天井空間を構成したり、石にぴったり合うように木材で石口つくるなどのようにミリ単位の職人の技術があるという印象を受けました。佐野さんのアートプロジェクトの作品はどれも地域の素材や技術を使用されているという印象を受けました。その中でも、30面体くらいに簡略化した岩石群「磐座」を人工的に作ることで御神体としての象徴的な場をつくり地域が持つ、失われつつある文化を取り込んだ「磐座-Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」でのアート作品が特に印象的でした。岩の配置にセオリーはあるが最後は感性であることが理解出来ました。

 私は設計を行う上で素材に重きを置いて考えることはあまりなかったですが、地域の素材や文化に焦点を当ててみることも重要であると感じました。また、私はセオリーよりも感性で設計をしてしまうことが多いのですが、センスのいい作品に仕上げるためにはセオリーを踏まえた上で最後は感性に任せることが重要であると思いました。

 


R57:小山内里奈
 今回のFAレクチャーでは、建築家、美術家でもある佐野文彦さんの講演を伺い、数寄屋建築の設計において、素材の役割の大切さについて知ることができた。数寄屋建築は千利休の茶室のカウンターカルチャーとして作られ、木材の木目の状態で素材の一つ一つの個性をどのように引き出すかを考えることが大切だと学ぶことができた。

 私は、今まで設計をする際に木質や素材にこだわったことがなかったが、建築を立てる上で必要な構造部分の木材も加工する際にどの部分をどの角度から魅せていくのか考えることに木材を使った建築の落ち着きや壮大さが感じられると改めて感じた。

 質疑応答の際に素材の活かし方において多くの人が共通の感性を持っているが、あえて逆を突いて表現することがあると聞き、素材の活かし方も設計と似た要素があり、今後の設計に活用してみたいと思った。

 


R58:中野宏太
 今回、FAレクチャーでは数寄屋大工の経歴をもつ、建築家兼美術家の佐野文彦さんにご講演いただいた。講演の中で、規格で揃えられた建材を使う現代の建築に対してのカウンターカルチャーとしての意味を持つ数寄屋建築では、自然の表情を大切にして材料を選ぶ素材への向き合いかたを大事にしているとお話があった。木や石などの自然からの建材の面や顔を見て加工や組み合わせを現場で考える、手間のかかる作業でありながら最適解を見つける作業について実例を見せながらお話していただいた。効率化された現代の工法では求められないような素材による空間を実現していた。CADで四角を書いて柱とする自分の設計では成し得ないものであると感じた。

R59:大場玲旺

 今回は数寄屋大工の修行を経て、建築家・芸術家として活躍される佐野文彦氏にご講演頂いた。
 木材や石などのそのものの特性や美しさへの理解、それを建築のデザインや構造にどう生かすかについて学んだ。素材には同じものは二つとなく、それぞれにしかない個性があることを知った。また素材1つ1つに対し、正面の見せ方、手触り、香りといった五感からなる感性と美しさのセオリーから導き出される素材の組み合わせ方、活かし方があることを学んだ。佐野さんの素材に対する繊細なこだわりは数寄屋大工としての経験から得た技術であるのだと感じたと同時に、学生の設計課題では建築の形状やデザインを考えることで精一杯になり、なかなかディテールまでつくる機会は少なく、自分も素材1つ1つにまで意識を及ばせることができたら、もっと設計の幅を広げることができるのではないかと考えた。最後に講義全体を通し、地域の持つコンテクストを取り入れつつ、数寄屋建築の伝統的な技法と現代のニーズを融合させた新しい文化の価値を作ることの面白さを学ぶことが出来た。

R60:一ノ瀬愛弓

 今回、佐野氏の公演を通して自分の興味に対する知見を深めることができた。

 前半の数奇屋大工のお話では、その土地の素材を活かしていくことや一つ一つの素材に合った向きや使い方で建てていく面白さを知れた。茶の湯から派生し、自然の表情を活かしたつくりで空間を形成していく。木の表と裏や石の凹凸を利用したもの、内装でその地域のものを使うことで地域とのつながりをつくったりと、素材に拘ることで生まれる空間の良さを知ることができた。トンネルを竣工した際は、トンネルと地域住人の心情的な距離感を近づけるために、トンネル内に木枠のグリッドで造られた仮設の飲食スペースをつくる等、山と人の距離をどう近づけていくかを考えていて参考になった。
 後半の林業に関するお話では、どうやって森林に対する問題意識が薄い人たちに関心を持ってもらうかを拝聴した。山は人よりも時間スケールが大きい。そのため、山と人を繋ぐものはお金等ではなく記憶や人の思い出なのだろう。人工林と人々を繋げるためには、人工林や山に問題意識を持っている私たちが架け橋となる必要があることを再認識できた。

R61:後藤駿之介

 建築家・美術家でもある佐野文彦さんのご講演を通して,「素材は資材ではなく1つ1
つ個性がある」という考え方から新たな視点を持つことができたと感じる。
 「ヒノキを材としてではなくどう見るか」や「石屋に行って自分で見てみる」など素材1つ1つを大事にしていることを感じ取ることができた。また,戦後に植え育った木が高く売れないことや木が燃料として高く売ることから,ただ使うだけは良くないということにも興味を持った。
 「木をとりまくダイアグラムについて」や「自分が面白いと思うもの・興味を持ったものをさらに面白くするようにする」といった内容は,自身の今後のことに生かしていくことができるのではないかと感じ,卒業制作などにもこの考えを持ちながら取り組んでいきたいと考えた。

R62:小島徹也

 今回のFAレクチャーでは建築家であり美術家でもある佐野文彦さんにお話をいただ
いた。私自身数寄屋建築に関してはほとんど知識がなかったため、講演内容全体を通
して新たな知識や気づきを得ることができたと感じている。特に「木」に対するこだ
わりが強く、「木」を単なる材としてだけでなく数寄屋の空間を彩るオブジェクトと
して設計している点が非常に興味深かった。木目を意識した部材選定や丸太の正面を
読み取ったうえでの施工など一般的な建築物では見られない設計手法がとられている。
より手間をかけた素朴な空間づくりの姿勢に一層の面白さを感じた。
 また、数寄屋建築の立場から見た国土の木材に関する言及もなされていた。資本主
義的に価値が見いだせない日本の森林に対して、木に対する抒情的な価値を見つけて
いき需要を増やすべきだという意見に大いに共感した。日本国内の木への魅力が向上
し、木材の問題解決につながることを期待する。

R63:石井琢夢

 佐野文彦さんによる、現代建築とアートを支える数寄屋大工の技と思考に関する講演を聴かせていただいた。数寄屋建築は、選りすぐりの素材が寄り集まって形作られる側面と、一つの大きな素材から様々な部材が切り出される側面の、一見真逆のような二つの面を併せ持っていて、しかしそれらは素材を吟味するという点に共通点があるという話が非常に興味深かった。大量生産の時代が終わり細部にまでこだわりをもった建築というものが当たり前になってきている中で、何を素材として用いるかを考え抜くというのは非常に重要である。また、輸入品に頼らず国産の素材を用いるという点もこれからより一層重要視されていくであろう。私はまだまだ、素材に関する知識が乏しい。今回の講演をきっかけとして、建築に用いられる素材に関する知識を蓄えていきたい。

R64:宮澤太陽

 数寄屋大工の経験から建築家/アーティストとして活躍されている佐野文彦さんのご講演を聞き、数寄屋建築における素材の捉え方や空間づくりを学び、新たな解像度や角度からの視点を得ることができた。
 「地域のコンテクスト」を大切にしていることからは一般的な建築と同じ視点を持っていると感じたが「素材も生き物として扱う」ことやヒノキ材でもどの位置を切るかで顔が変わるため切り方によって異なる印象を持つこと。ある意味で素材をデザインしていることから数寄屋建築の素材に対する並々ならぬ向き合い方を感じ取ることができた。

 国の人工林で育った木材の価値の問題について非常に興味深く感じ、人工林について調べ学びたいと感じた。

R65:市之瀬航生

 今回、佐野文彦氏による現代建築とアートを支える数寄屋大工の技と思考をご講演頂いた。佐野氏は数寄屋大工の面白さについて、様々な素材を使い個性を活かすこと、木材というよりひとつの木をどう使うか考えることに面白さがあると話していた。実際に行ったプロジェクトの話を聞くと、ひとつの木でもどの木目を見せるか、石の正面はどこか、組み合わせばどうかなど強いこだわりを感じ、そこに数寄屋大工の面白さがあると感じることが出来た。自分たちがやりたいこと、面白いと思うこと、伝えたいことを表現出来るものは何かを考え、勉強していくことが大事と話されていて、私も自分のやりたいこと、表現したいことを大切にしていきたいと感じました。

R66:菅谷心洋

 今回のFAレクチャーでは、「現代建築のアートを支える数寄屋大工の技と思考」のもと佐野文彦さんにご講演いただいた。
 数奇屋大工時代のお話の際に、「素材は資材ではない」というワードが印象的であった。ひとつひとつの個性を生かして、探して、手間をかけて、質素な雰囲気を演出する。事例と共にそれを続けていくことの魅力をお聞きした時に、設計課題では得ることのできない知見であると感じ、社会に出て実際に素材を検討しながら設計することが楽しみな気持ちになった。
 また、数奇屋の施工事例においても、印象や根底に大切しているものが各々に違うことを理解した。理論と感性のバランスを取りながら、木材の社会的な問題についても配慮しつつ作品を創る佐野さんのお話を伺い、多角的な視点を持つことの重要性を感じた。

R67:庵本未優

 今回は数寄屋大工を経て、建築家であり美術家として活躍されている佐野文彦さんにご講演いただきました。
 数寄屋建築では材料自体がもつ自然のプロモーションをいかに表現に活かすかが重要であり、木や石といった素材がもつ「正面」を見極めて組み合わせるという話が印象的でした。木にも競りがあることを初めて知り、自らで選定し、角度や面にこだわりを持つからこそ素材の魅力は増し、それが建築に現れるのだろうと思いました。また、複雑で手間がかかることは一見貧乏くさいが贅沢でもあると仰っていて、ここに素材から空間を考える面白さがあると感じました。素材はこれまでの設計でしっくりこないと感じた部分でもあったため、知識を深め表現に活かしていきたいと思いました。

東京電機大学 地域・建築デザイン研究室|菅原大輔研究室

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